2026.02.11

2026年2月 関東合同月例会レポート

ミートアップ・トーキョー ── 日本の未来を考える

2026年2月4日|EO関東合同月例会 @ セルリアンタワー東急ホテル

2月のチャプターミーティングは、EO史上初の関東合同月例会「ミートアップ・トーキョー」として開催されました。Tokyo Central、Tokyo West、Platinum、Metropolitan、Kanagawa、Ibarakiの6チャプターが集結し、全11チャプターから約270名が参加する過去最大級の規模となりました。

第一部:Best Practice Share

4名の登壇者が、それぞれの事業における葛藤と挑戦を赤裸々に語りました。

藤田浩一さん(株式会社常陸風月堂/EO Ibaraki代表)

「三代目の和菓子屋が、世界一高級な栗羊羹で変えた世界」

茨城県日立市十王町、人口1万3千人の小さな町から来た藤田さん。1948年創業の和菓子屋を三代目として2020年に事業承継しました。従業員13名の「小さな我が社」を率いる経営者です。

藤田さんが会場に投げかけた問い。「100円の大福を一個売った時の利益、いくらだと思いますか?」──答えは10円。和菓子業界には「値上げすら憚れる空気」が根強く、職人として利益を追求することは恥だとすら考えられている。しかし原材料費も人件費も上がり続ける中で、頑張れば頑張るほど経営は苦しくなる。社長就任後、この矛盾が最初のハードシングスとして襲いかかりました。

そこで生まれたのが主力商品「万葉館」。通常3,000〜4,000円の羊羹の市場に、1万5,000円という価格で挑んだ世界一高級な栗羊羹です。日本で8軒の農家しか作れない幻のブランド栗「飯沼栗」を使い、一本一本手作り。量感の8割が栗という驚きの設計で、贈答品としての「記憶に残る体験のギフト」を目指しました。

しかし、藤田さんの葛藤はそこで終わりません。ビジネススクールで「あなたが本当にやりたいことは何ですか?」と問われ、何も答えられなかった。家業の枠の中で正解を探す癖がついていた自分に気づき、ようやくたどり着いた原体験は、3歳の頃に地元の栗を食べて笑顔になり、周りの大人も笑顔になったという「笑顔の連鎖」の記憶でした。

万葉館が注目されるほど不安は増した。狙って作った成功なのか、たまたまではないのか。再現性はあるのか──。しかし世界的なデザインアワードの受賞をきっかけに「田舎からでも世界に飛び出していい」と気づき、ニューヨーク進出を決意します。

EOには2022年に入会。メンターから販売戦略・事業プラン・数字の見方・優先順位の付け方を学び、社長就任5年で売上3倍、年商1億円を達成してアクセラレーターからグローバル会員に昇格しました。「孤独だった挑戦を、EOがチームの挑戦に変えてくれた」と語る藤田さんの判断軸は三つ。「ワクワクするから進む」「関わる人みんなが笑顔になれるか」「できた未来をイメージできるか」。和菓子を「世界の共通語」にする挑戦は、まだ始まったばかりです。

 

石川秀明さん(有限会社石川商店/EO Tokyo West代表)

「辞める勇気を持つ──昭和・平成・令和の商売への転換」

静岡県三島市で73年続くレディースセレクトショップの後継者として、石川さんが語ったのは「辞める勇気」がもたらした3度の事業変革でした。

2011年、家業に入った時点の売上は3,000万円。70〜80代をターゲットにした昭和型のブティックでした。これをまず2014年に1,000万円をかけてリブランディングし、ターゲットを30〜40代に一気に引き下げ。50ブランドを揃えるセレクトショップへと業態を転換し、売上は8,000万円に伸びました。

次の転換は2019年のライブコマース参入。妻のInstagramでの着画投稿にDM経由で購入希望が殺到したことがきっかけでした。150ブランドからサンプルを借りて受注予約で販売する「在庫が残らない仕組み」を構築し、コロナ追い風もあって売上は3億円に到達します。

そして2022年、EO Tokyo Westに入会。3億円で踊り場を迎えていた事業は、メンターの後押しで広告費を前年の10倍となる4,000万円に引き上げたことで一気にブレイク。集客が3倍になり、売上も3倍の10億円を達成しました。石川さんのまとめは明快です。「客層を絞る辞める勇気」「強みに全振りする覚悟」「メンターシップへの本気のコミット」。この三つが成長の鍵だったと語りました。

 

高橋俊介さん(株式会社SeeD/EO Kanagawa代表)

「100億最速突破するために、下した業界最大M&Aの裏側」

38歳、北海道出身の高橋さんは、春の高校バレーで全国3位という経歴の持ち主。美容師からエンジニアに転向し、2021年にSES事業で株式会社SeeD を創業しました。

驚くべきはその成長速度です。創業4期目の着地で正社員220名・売上20億円。そして2026年3月、同業の株式会社テクニケーション(正社員450名・売上24億円)との対等合併を決断しました。合併後の社名はテクニケーションシード、社員数は700名超。年間採用数250名、累計リファラル採用130名という規模感は同業界でも突出しています。

しかし、意思決定は簡単ではありませんでした。売上20〜30億あれば、経営者個人としては十分に自由な生活ができる。その「自己最適」と「全体最適」の間で2〜3週間葛藤したと語ります。EOで出会った50億・100億・1000億の経営者たちの姿を見て、「かっこいい人たちを目指したい」「やらない後悔より、やってみてからの後悔を選びたい」と最終決断に至りました。

資本政策の調整も壮絶でした。4名の株主の利害を調整し、高橋さんとテクニケーション社長の西田さんが各38%の対等な比率に落とし込むプロセスは、社内からの反発も含めて生々しいものでした。合併発表後は外部から7件のM&A問い合わせが来るなど、さらなる拡大の布石も打たれています。中期計画では2028〜29年に売上100億円を達成し、最短でIPOを目指す方針です。

 

黒須綾希子さん(株式会社cotta/EO Tokyo Central代表)

「3年前売却を検討した企業が、他社を買う150億企業になるまで」

41歳、3児の母。来期のTokyo Central会長に就任予定の黒須さんが語ったのは、売却寸前からの起死回生の物語でした。

cottaは日本最大級のお菓子・パン特化型通販サイト。約3万点の品揃えで、全国のケーキ屋と一般消費者の両方を顧客に持ちます。もともとは大分県津久見市──日本一人口の少ない街(1.4万人)で、父が始めた乾燥剤の卸業がルーツです。1個2円の乾燥剤を売って利益を出すために、ニッチで面倒な流通の仕組みを磨き上げてきた会社でした。

黒須さんは新卒でインテリジェンスに入社後、父の会社の危機に際して退社。子会社を設立してECへのピボットに着手し、3年でグロース市場に上場します。インフルエンサーマーケティングの走りとなるブロガーコミュニティを100名以上で構築し、PB商品を拡充。join後10年で売上は20億円から78億円に成長しました。

しかし2020年のコロナ特需が転機となります。ECサイトがダウンするほどの注文が殺到し、売上は95億円に急伸。100億円突破を確信して超強気の計画を発表したものの、外出制限解除とともに特需は剥がれ落ちました。大幅な下方修正を余儀なくされ、時価総額は115億円から30億円に暴落。双子の子どもはまだ1歳、夜泣きに付き合いながら日々会社に通う日々。その苦しみの中でEOに入会します。

追い打ちをかけたのは、原材料の高騰によるケーキ屋の倒産件数の過去最大化と、女性の社会進出によるお菓子作り市場のシュリンク。泥沼から抜け出せない中で、大手製菓メーカーから「2.5倍のプレミアムで買う」というオファーが届きます。「今なら価値がつく。社員も路頭に迷わない。母親に戻れるかもしれない」──ほぼ売却を決め込んでいました。

しかし最後に引っかかったのは、「日本一人口の少ない町からここまで来た誇り」と、EOの仲間たちの姿でした。「売るのはいつでもできるよ。俺ら、せっかく選ばれて起業家やってるのに、もったいなくない?」──この言葉でピボットを決意します。

自社の強みを「小規模店舗向け・ニッチ特化・面倒な流通の仕組み化」と再定義し、その横展開先として美容室向け卸業の会社を30億円のシンジケートローンで買収。1年で2社のM&Aを実行し、売却を検討していた会社は売上150億円・EBITDA10億円の企業に生まれ変わりました。「あの時EOに出会っていなければ、穏やかにいいママをやっていると思います。それもきっと幸せですが、今が一番私らしいです」。会場に深い余韻を残すシェアでした。

第二部:6チャプター会長トークセッション ── 日本の未来について

関東6チャプターの会長がステージに集結。起業家としてのリーダーシップの本質に迫るトークセッションが展開されました。

登壇者(登壇順)

  • 五十嵐 幹さん|株式会社クロス・マーケティンググループ 代表取締役社長兼CEO(EO Tokyo Platinum 会長)
  • 山木 智史さん|株式会社Re-grit Partners 代表取締役(EO Tokyo Central 会長)
  • 鈴木 賢志さん|株式会社トータルフロー 代表取締役社長(EO Tokyo West 会長)
  • 金子 達さん|金子金物株式会社 代表取締役(EO Ibaraki 会長)
  • 小泉 英一さん|株式会社HITOMIOテクノロジーズ 代表取締役社長 CEO(EO Kanagawa 会長)
  • 中村 清彦さん|株式会社インターナショナルダイニングコーポレーション 代表取締役CEO(EO Tokyo Metropolitan 会長)

なぜ会長を引き受けたのか

6名の会長それぞれが異なる経緯を語りましたが、共通していたのは「求められたから応えた」という姿勢でした。

Tokyo Centralの山木さんは、歴代会長やメンバーの凄さに恐怖を感じ、一度は断ろうとしたと告白。前々期会長からの推薦の意味を信じたことと、EO大阪の元会長から「頼まれごとは試されごとやぞ」と言われたことが決め手になったと語ります。

Metropolitanの中村さんは、20年のEO歴を持つベテラン。引退を考えていた矢先にチャプター内のトラブルで次期会長が不在になり、「お前しかいない」と頼まれて引き受けたというエピソードを披露しました。

Platinumの五十嵐さんは「プラチナムでは会長は罰ゲーム。みんなやりたがらない」と会場を笑わせつつ、50歳の決め事として「来た仕事は断らない」と定め、引き受けたと語りました。

Ibarakiの金子さんは、まだ3期目のチャプターが空中分解しかけたタイミングで引き受けた経緯を率直に。「非公式の遅刻罰金が450万円たまっている」という自虐エピソードも交えつつ、報酬も評価もない中で人を動かすには「ミッション・ビジョン・パッション」を伝えるしかないという学びを共有しました。

会長期を通じた最大の学び

山木さんは、30名の理事会を「将来のグループ経営のシミュレーション」として運営していると明かしました。旗を立てて方針を決めたら基本的に何も言わない。大きな問題があった時だけ動く。「実は何もやっていないのに、ほとんどのことがうまくいく体制ができている。これが将来1,000億の組織になった時の姿だと今知れた」という言葉は、経営者にとって示唆に富むものでした。

五十嵐さんの学びは「どんなすごい経営者でも、人であること」。上場企業45社を擁するPlatinumのメンバーも、遅刻するし面白くないと来なくなるし文句も言う。「動画も作れないしパワポもつけられない」と笑いを誘いつつ、結局人を動かすのは人間関係であり、「飲んだ量」だと断言。EO年会費より飲み会代のほうが高いというリアルなエピソードに、会場は大いに盛り上がりました。

EOを活用して乗り越えた壁

Tokyo Westの鈴木さんは、EO入会前に大阪のゲスト参加で言われた一言を忘れられないと語りました。名刺を2枚出した自分に「何屋かわからん」と指摘され、ニッチでもいいから日本一を目指せと言われたこと。苦しい時期を支えたのはその言葉で、実際にマグロ解体ショーで日本一の実績を築きました。その指摘をくれた方は、来期EO Japan会長の須田さん。EOのつながりが何年越しで実を結ぶ好例でした。

Metropolitanの中村さんは、20年間のEO経験を通じて「規模の大小に関わらず、経営者は同じ人間」という壁を越えられたことが最大の学びだと語ります。さらに、英語が全く話せないところからアジアパシフィックフォーラムに飛び込み、グローバルのネットワークを築いた経験が海外事業展開の原動力になったことを力強く語りました。

起業家として日本の未来に向き合う

最後のテーマ「起業家として日本の未来に起こること」では、各会長が自社の課題と向き合いながら、この国の未来への思いを語り始めたところで、熱気あふれる夜は閉幕の時間を迎えました。

なお、第二部に先立ち、Tokyo Centralのポリシーレコメンデーション理事からは、EO会員176名のアンケート・インタビューに基づく政策提言レポートが発表されました。会員の7割以上が政策面でのボトルネックを感じているという結果を受け、労働規制・解雇規制、IPO・M&A関連、行政手続きのデジタル化について、経済産業省との共創フォーラム開催を含む具体的なアクションが進行中であることが報告されています。

4人の登壇者に共通していたこと

第一部の4名の経験シェアには、業種を超えた共通メッセージがありました。

「辞める勇気」と「ピボットの決断力」。 藤田さんは和菓子の常識を捨てて高価格帯に挑み、石川さんは客層もチャネルも大胆に転換し、高橋さんは自社の成長を手放してM&Aに踏み込み、黒須さんは売却という安全な選択肢を捨ててピボットに賭けました。いずれも「今のままでは先がない」という危機感から生まれた意思決定です。

EOとの出会いが転機になったこと。 4名全員がEOのメンターシップ、フォーラム、仲間との対話を通じて事業の景色を変えています。藤田さんは売上3倍、石川さんは売上3倍の10億円、高橋さんはM&Aによる業界最大級の統合、黒須さんは売却検討から150億円企業への変貌。EOが「孤独な経営者の挑戦」を「チームの挑戦」に変える装置として機能していることを、4つの実例が如実に示していました。

怖くても前に進む覚悟。 藤田さんは「怖さがあるからやめるんじゃなくて、ワクワクするから進む」と語り、黒須さんは「逃げてるのかもしれない」という自問から再起しました。恐怖と向き合いながらも一歩を踏み出す──その覚悟こそが、起業家の本質だと改めて感じるイベントでした。

全11チャプター270名が集い、圧倒的な熱量で繰り広げられた「ミートアップ・トーキョー」。経営者同士がフラットに経験をシェアし合い、互いの挑戦に刺激を受けるこの場の価値は、会場にいなければ伝わりきらないかもしれません。

EO(Entrepreneurs’ Organization)は、年商1億円以上の創業経営者が参加するグローバルな起業家ミュニティーです。関東エリアでは6つのチャプターが活動しており、毎月の月例会に加え、フォーラム・メンターシップ・グローバルイベントなど多彩なプログラムを展開しています。入会にご興味のある方は、ぜひガイダンスにお申し込みください。

 

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